コウブシ(香附子) 英名:Cyperus Rhizome ラテン名:Cyperi Rhizoma
基原植物:Cyperus rotundus Linné(カヤツリグサ科)
基原植物であるハマスゲは、多年草で草丈は20~40cmになります。8~9月頃に開花し、秋頃に茎の先より枝を出し、茶褐色の穂をつけます。生命力の強い強害雑草で、時にはアスファルトを押し上げて発生します。特異な香りがあり芳香性の強いものが良品とされます。またアロマテラピーに用いられたりもします。
香附子の生薬名は、根茎が「附子」に似ており、さらに「香り」を有している事に由来するとされています。しかし「附子」はキンポウゲ科で基原植物が異なります。
*附子:新陳代謝の改善、冷えの解消、鎮痛作用(なかでも難治性神経障害性疼痛)、利尿作用があります。
ハマスゲの花
目次
1.基原
1-1.基原
本品はハマスゲCyperus rotundus Linné (Cyperaceae)の根茎である。
1-2.調製
秋~翌年の春に根茎を採取し、日光で半乾し金網上で細根を焼き、筵(むしろ)などに広げて乾燥させます。
2.産地
熱帯・亜熱帯・温帯に広く分布しています。海岸などの砂浜に多く見られますが、道端、畑、庭にも自生しています。
3.主な成分
3-1.Cyperol(シペロール)
(CAS No. 200884-99-5) 【構造式:出典】J-GLOBAL シペロール
3-2.(+)-α-Cyperone((+)-α-シペロン)
(CAS No. 473-08-5) 【構造式:出典】J-GLOBAL シペロン
3-3.その他
テルペン類:α-Pinene、Cineole、Campheneなど
4.効果・効能
4-1.婦人科系疾患の改善
子宮収縮抑制による月経障害、生理痛、更年期障害などの婦人科系の疾患に効果があります。
4-2.鎮痛作用
慢性胃炎、神経性胃炎、頭痛などに効果があります。
4-3.鎮静作用
イライラ、抑うつに効果があります。
4-4.その他
歯ぐきの腫れや出血に効果があります。コウブシを粉状にして食塩と混ぜ、歯ぐきをマッサージします。
5.副作用
報告例は少なく、コウブシ含有の漢方の添付文書を参考にしてください。
6.副作用の回避
副作用の多くは過剰摂取に起因しています。過量服用や長期使用には注意が必要です。
7.コウブシの多様な研究
Figure:Biological activity of Cyperus rotundus Linné
Figureにコウブシの主な研究領域を示します。中でも炎症に関連した論文が多く見受けられます。
8.トピックス:近年の研究
8-1.コウブシの抗脂肪効果
コウブシの3T3L細胞における抗脂肪効果は、PPRɤの発現低下とGLUT4の発現増加に起因すると推察された。
8-2.コウブシのアポトーシス誘導による抗ガン作用
コウブシのジテルペンアルコール画分は、HeLa細胞のBcl-2の発現を減少させ、Baxの発現を増加させる事によってアポトーシスを誘導した。
9.引用文献
・漢方知識「生薬単」初版, 98-99