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生薬解説【ショウブ根】       基本情報・学術トピックス

ショウブ根(菖蒲根)
英名:Sweet Flag Root、(Sweet) Calamus、Sweet Root、Sweet Rush
ラテン名:Acori Rhizoma
基原植物:Acorus calamus LinnéAraceae サトイモ科)
基原植物であるショウブは常緑多年生の草本です。水辺に群生し草丈は50~70㎝くらいになります。初夏(5~7月)に円柱状をした黄緑色の小さな花が密集して咲き、植物全体、特に葉には芳香があります。この爽やかな香りには邪気を払う力があるとされ、また葉の形が刀に似ていることから男子に縁起のいい植物とされています。また、端午の節句には、健やかな成長を願って「ショウブ湯(ショウブの葉を浮かせたお風呂)」に浸かる習慣があります。
ショウブの花(サトイモ科)
参考:鮮やかな花を咲かせる「ハナショウブ」は、地味な花を咲かせる生薬の「ショウブ」とは全く別の植物です。「ハナショウブ」の別名は「ハナアヤメ」と呼ばれ、アヤメ科の植物で混同される事が多い様です。
ハナショウブの花(アヤメ科)

1.基原

1-1.基原

Acorus calamus LinnéAraceae)の根茎。

1-2.調製

晩秋から冬期に根茎を採取し、ひげ根を取り除き、水洗した後に天日で乾燥させます。

2.産地

北海道から九州、東アジア、インドなど。池、小川のほとり、沼地などの水辺で生育します。

3.主な成分

3-1.β-asarone(β-アサロン)

(CAS No. 5273-86-9)   【構造式:出典】J-GLOBAL ホームページ

3-2.Eugenol(オイゲノール)

(CAS No. 97-53-0)   【構造式:出典】J-GLOBAL ホームページ

3-3.Acorone(アコロン)

(CAS No. 10121-28-5)   【構造式:出典】J-GLOBAL ホームページ

3-4.その他

・Sesquiterpenoids:Calameone、Isocalamendiol、Acoronene 他

・Phenylpropanoids:ɤ-Asarone、Metyleugenol 他

・Fatty acids:n-Heptylic acid 他

・Other aromatic derivatives:Asarylaldehyde 他

4.効能・効果

4-1.経口

4-1-1.芳香性健胃作用

消化不良、胃炎、胃痛、吐き気、下痢などの改善効果があります。

4-1-2.その他

血圧降下、咳、てんかんなどの改善効果があります。

4-2.入浴剤

4-2-1.血行改善

冷え、腰痛、肩こり、筋肉痛、神経痛、リウマチの改善効果があります。

4-2-2.アロマテラピー

疲労、ストレス、不眠症、ヒステリーの改善効果があります。

4-2-3.その他

皮膚真菌に対して有効と言われています。

5.副作用

*軽度の毒性がありますが、毒性成分の含有量が微量のためリスクは非常に低いです。

5-1.経口

効果が過剰に効きすぎて、吐き気、嘔吐、腹痛などの症状が出る事があります。

5-2.入浴(ショウブ湯)

敏感肌の方は、稀に発疹、赤み、腫れを引き起こす事があります。
参考:Picture This 植物の百科事典

6.副作用の回避

副作用の多くは過剰摂取に起因しています。過量服用や長期使用には注意が必要です。
また、ショウブの根茎を生で内服すると、吐き気、嘔吐する事があり避けるべきです。

7.ショウブ根の多様な研究

Figure:Biological activity of Acorus calamus Linné

【出典】Subhashimini Dukkipati. A Review on Acorus Calamus Linn.

Ref. ①:Subhashimini Dukkipati, (2023). A Review on Acorus Calamus Linn. Journal of Clinical Pharmacology and Therapeutics, 4(3), 050-055

Ref. ②:N Umamaheshwari and A Rekha. (2018). Sweet flag: (Acarus calamus)-An incredible medicinal herb. Journal of Pharmacognosy and Phytochemistry, 7(6), 15-22

8.トピックス:近年の研究

8-1.ショウブの根の抗菌活性を示す抽出画分と抗菌活性のメカニズムの研究

ショウブ根のヘキサン抽出物には抗菌活性を有している画分あり、それはAsaroneが主成分である事が判明しました。この画分は細菌の細胞膜中の、脂肪酸の組成と膜透過性を変化させる事が判明し、これら事によって抗菌活性が発現する事を示唆されました。

Ref. :Kongkham, B,. et al. (2024). Acorus calamus L. rhizome extract and its bioactive fraction exhibits antibacterial effect by modulating membrane permeability and fatty acid composition. Journal of Ethnopharmacology, 331, 118323-

8-2.ショウブ根の抽出物に関する抗癌活性を有する化合物の同定

ショウブ根より抽出されたβ-asarone、β-sistosterol及びStearic acidには肺癌、膵臓癌、結腸癌及び乳癌に対して癌細胞の増殖抑制が認められました。

Ref. :Akhter, S,. et al. (2024). Extracts and isolated compounds from the Acorus calamus L. (sweet flag) rhizome showed distinct antimetastatic activity against MDA-MB-231 breast cancer cells. Medicinal Plant Biology, 3, e021

8.引用文献

第十八改正日本薬局方

日本薬局方収載生薬の学名表記について

公益社団法人 日本薬学会 ショウブ

一般社団法人 和ハーブ協会 イー薬草・ドットコム ホームページ

一般社団法人 日本人形協会 端午の節句-芭蕉

Metabolomics JP

化成品成分オンライン ショウブ根茎エキスの基本情報・配合目的・安全性

富山大学 和漢医薬学総合研究所 資料館生薬データベース

Trad MPD 生薬学術情報 伝統医薬データベース 菖蒲根

熊本大学薬学部薬用植物園 薬草データベース ショウブ

学校法人 東邦大学 薬学部付属薬用植物園 ショウブ

全薬グループ 健康情報 ショウブ

養命酒製造株式会社 元気通信 生薬ものしり辞典 端午の節句の主役「菖蒲根」

株式会社馬場薬局 漢方相談馬場薬局

重井薬用植物園 おかやまの植物事典

丸善製薬株式会社(薬粧部)【健康美容EXPO】 植物成分なら「ショウブ根エキス」

日野製薬株式会社 生薬ブログ(Crude Drug) 【6月】薬草の花 ショウブ(菖蒲)

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