埼玉県を中心に、「おふろcafé」という独自の業態の温浴施設を展開している株式会社温泉道場。「おふろから文化を発信する」「地域を沸かせ」をミッションに掲げる同社は、新しい温浴施設の在り方を体現すると同時に、事業活動を通じた地域の活性化に取り組み続けています。
代表取締役社長を務める山﨑寿樹さんは、温泉道場の創業以前には温浴施設のコンサルティングに携わっており、健美薬湯(当時ヘルスビューティー)とのお付き合いは、その頃からはじまりました。温泉道場の創業時からお取引のある健美薬湯の商品や、温浴事業にかける想いを、山﨑社長にお話しいただきました。
温浴業界への可能性を感じ、2011年に創業
2011年の3月に創業した温泉道場は、温浴施設の運営やリノベーションによる事業再生支援をメインに、事業活動を通じた地域活性に取り組んでいます。
前職では温浴施設のコンサルティングに携わり、当時から温浴業界には可能性を感じていたんです。もともと温浴業界で起業しようと考えていたわけではなかったんですが、埼玉県の「玉川温泉」と「白寿の湯」の事業譲渡のお話をいただき、挑戦してみようとお引き受けしたことが、創業のきっかけとなりました。
健美薬湯さんとは、コンサルティング時代に実施していた説明会やセミナーでお世話になって以来、継続してお付き合いさせていただいています。温泉道場を創業してからも、商品のお取り扱いはもちろん、温浴業界の活性化のための活動を通して、さまざまな場面でご一緒させていただきました。
お風呂は「メディア」であり、地域文化の「ショーケース」
起業して1年ほどが経った頃から、ただ集客に力を入れるのではなく、店舗のある地域自体の魅力を高めることが、結果として自分たちの集客につながるのではないかと考えるようになりました。温浴業界は、旅館やホテルといった業界に比べて規模が小さく、そもそも我々のような地方のお風呂屋さんだけを目的に訪れるお客様は少ないので、集客のためには、地域全体の観光についても考えなくてはいけません。
そこで私たちは、お風呂を「メディア」と捉えることで、衣食住といった地域文化のショーケースのような役割を、お風呂屋さんが果たすことできるのではないかと考えました。ほとんどの方が自宅にお風呂がある現代において、温浴施設での新しい体験を提供するために、我々は「おふろから文化を発信する」「地域を沸かせ」をミッションに、各店舗でイベントなどのさまざまな取り組みを実施しています。
業界に一石を投じた「おふろcafé」
コンサルティング時代の経験を通してわかったのは、時間滞在型の施設である温浴施設の競合相手となるのは、同じお風呂屋さんではなく、他の商業施設だということです。お客様にとって、温浴施設というのはあくまでお出かけ先のひとつであって、近隣に新しい商業施設ができると、その分我々のお客様は減ってしまいます。他の施設に劣らない魅力的なお風呂屋さんをつくる必要性を感じ、3店舗目となる施設では、お風呂屋さんとカフェをかけ合わせた新しい業態として「おふろcafé utatane」をオープンしました。
2013年のオープンから、マンガ喫茶やホテルなど、さまざまな業界の方が視察に来られました。中でも嬉しい反響としてあったのは、ディズニーランドに行く予定の方が、「もし雨だったらおふろcaféにしよう」とSNSに投稿されていたことで。その時にあらためて、私たちが目指さなくてはいけないのは、お風呂屋さん同士で競い合うことではないということを実感しました。「おふろcafé」を通して私たちが業界に投じた一石は、結果的にマーケットを大きくすることに貢献できたのではないかと考えています。
“本物”であることの安心感と楽しさを提供する入浴剤
健美薬湯さんの商品は、温泉道場の創業時から物販でお取引させていただいています。「おふろcafé utatane」をオープンしてからは、変わり湯に使用する入浴剤や、施設独自で実施している催し物など、さまざま場面でお世話になっていますね。
健美薬湯さんは、実際に身体への効果がある入浴剤を提供されているので、商品に“本物感”があることが大きな魅力だと感じています。ポスターなどのコミュニケーションツールもあわせて提供いただけるため、お客様に商品のメリットを伝える上で説得力があります。我々も、小手先のテクニックではない、本質に向き合った事業活動に取り組みたいと考えているので、健美薬湯さんの姿勢への共感が、継続して商品を使わせていただきたいと感じる理由のひとつです。
また、愛知県常滑市にある工場にて、入浴剤やヘア・ボディ製品の製造過程など、どのように商品が製造されているのかを間近で見学できる機会をいただいたことがありました。松田社長をはじめ、健美薬湯の社員の方みなさんが、ユーザーとのコミュニケーションを大事にされている姿勢を感じましたし、顔の見える関係性を築けることが、商品への安心感につながっていると思います。
温泉道場で使用させていただいている健美薬湯の商品の中では、「硫黄の湯」などの薬湯にコアな男性ファンがついています。女性のお客様には、バレンタインの時期に提供しているチョコレートの入浴剤や、コラーゲン風呂などが人気ですね。健美薬湯の商品は、本物感はもちろん、肌や身体への効果が実感できるものや、お風呂の楽しさを感じられるものもあり、その幅広さも魅力だと思います。
また、埼玉に店舗が多い温泉道場にとっては、夏場の「クールシャンプー」は必需品です。気温が35℃以上になる日には、かき氷の上にシャンプーをかけた「かき氷シャンプー」を提供するゲリライベントを実施していて、毎年ニュースで取り上げられています。ほかにも、店舗独自の取り組みとしては、お風呂の中に大量の泡を降らせる「泡パーティー」などがあります。どれもお客様にとても楽しんでいただけている人気イベントばかりです。
温浴業界の活性化のためのパートナーとして
健美薬湯さんには、個人で活動している一般社団法人「ニッポンおふろ元気プロジェクト」にて、最大のスポンサーとしてもご協力いただいています。前社長である松田和也さん(2015年に逝去)とは、日本独自の入浴文化を海外の方にきちんと伝えていきたいという思いを共有させていただいていて、「いつか無形文化遺産に登録されるように頑張りたいですね」といったことをよくお話ししていました。
ほかにも、乳がんの早期発見のための啓蒙活動として、独自のピンクリボン運動を全国で実施する際に、プロジェクトのオリジナル商品を開発いただいたり、入浴剤の使い方や衛生管理のセミナーを実施する際にも、全国の温浴施設に帯同していただいたことが印象に残っています。さまざまなプロジェクトをご一緒する中で、健美薬湯さんが、我々温浴施設を取引先としてだけではなく、ともに温浴業界を盛り上げていく協業相手として考えていらっしゃるのを感じます。
松田社長とは、業界全体を活性化させると同時に、運営のレベルを上げていくためにも、温浴施設同士の横のつながりをもっと強くしていきたいというお話をよくさせていただいています。現在、温浴業界の約300社のうち、我々のような複数店舗を実施している会社はごくわずかです。業界内につながりのない店舗では、他の施設にとっての当たり前のことが、まったく通じないということもままあります。なかでも衛生管理については、井戸水や温泉の泉質は固有であるため、清掃の頻度や薬剤の使用方法など、店舗それぞれが独自のオペレーションとして落とし込んでいく必要があります。運営面でのノウハウを共有し、業界全体の安全水準を向上するためにも、健美薬湯さんとは、これからも継続してさまざまな活動を実践させていただきたいと思っています。
温浴施設の未来のために
普段から温浴施設に通っている方は、100人中10人もいないというのが温浴業界の現状で、マーケティングの視点からは、まだまだ関係人口の少ない市場です。しかしながらほとんどの方が毎日お風呂に入っていることを考えると、サービスとしては100%の方にリーチできる可能性があります。
業界の拡大のためには、未来のお客様をつくっていくことが不可欠です。我々がお風呂とカフェをかけ合わせた新しい業態をつくろうと思ったのは、温浴施設の利用客は高齢者や男性が多く、若いお客様や女性に向けた施設をつくらないと、将来的にユーザーがどんどん減ってしまうと考えたからでもあります。我々温浴施設は、ビジネスとしてどのようにマーケットを育てていくのかと同時に、公衆浴場だからこそ提供できる楽しさについて考えていかないといけない。これからも、さまざまなアプローチの世界観を持った店舗をつくることで、「お風呂屋さんっていいな」と幅広い方に思ってもらえるようにしていきたいと考えています。そのためのパートナーとして、健美薬湯さんとはこれから一緒に頑張っていきたいですね。