コウカ(紅花)
英名:Safflower flower
ラテン名:Carthami Flos
基原植物:Carthamus tinctorius Linné (Compositae キク科)
基原植物である紅花は、草丈が1m前後の1年草で、6月~7月頃に開花します。総苞片や葉の縁には鋭く硬いトゲがあるため、花の収穫は朝露でトゲが柔らかいうちに行います。野生品は見つかっていないため原産地は特定されていません。古くから栽培されているエジプトや近縁種が多い中近東が原産地と推測されています。
コウカの生薬以外の用途として、食用品(例えば紅餅)、染料(例えば紅花染め)、化粧品など知られています。若い芽や葉はサラダなど食用として、種子からはリノール酸、オレイン酸を多く含むサフラワーオイルが取れ、サラダ油、マーガリンなど食用油として使われています。
ベニバナの花
目次
1.基原
1-1.基原
本品はベニバナ Carthamus tinctorius Linné (Compositae)の管状花をそのまま又は黄色色素の大部分を除いたもので、ときに圧搾して板状としたものである。
1-2.調製
管状花をそのまま、又は水洗して黄色色素の大部分を除いたもので、ときに圧搾して板状としたものを乾燥させます。
2.産地
2-1.日本:山形県
エジプト・中近東からシルクロードを経て、飛鳥時代頃に渡来したと言われています。江戸時代に山形県最上地方で栽培が盛んになりました。現在、山形県の県花に指定されています。
観賞用、染料用、食用、化粧品として栽培されています。
2-2.中国:江南省、浙江省、四川省、雲南省、江蘇省など
「本草網目*」に「紅藍花(こうらんか)」という名で、主に婦人病薬として用いられ、冷え性、更年期障害に適応されると記載されています。
*本草網目:中国の薬物書。作者は医師・本草学者の李 時珍(1518-1593)。約1900種の薬物に関して記載されている。
2-3.エジプト
古代エジプトでは、ミイラの着衣をコウカで染色していました。
2-4.その他:インド、アメリカ
3.主な成分
3-1.Safloryellow(サフロールイエロー)
Safloryellow A CAS No. 85532-77-0 【参考:構造式】Chem SRC Safloryellow A
Safloryellow B CAS No. 91574-92-4 【参考:構造式】Chem SRC Safloryellow B
共に黄色色素(水に可溶)
3-2.Carthamin(カルタミン)
CAS No. 36338-96-2 【参考:構造式】Chem SRC Carthamin
赤色色素(水に不溶)
3-3.その他
・Lipids:Safflower oil 他
・Flavonoids:Carthamidin、Neocarthamin 他
4.効能・効果
4-1.活血・通経・駆瘀血(くおけつ)
月経不順、冷え症、更年期障害、産後の腹痛、血行障害など主に婦人薬として処方されます。
4-2.中枢系に作用
鎮痛、鎮静、消炎作用があります。
5.副作用
血液凝固時間を延長することが知られています。
6.副作用の回避
妊婦は禁忌。出血性疾患や消化器性潰瘍を患っている方は注意が必要です。また、過量とならない様に服薬してください。
7.コウカの多様な研究
Figure:Biological activities of Safflower Flower(Carthamus tinctorius Linné)
FigureにChengらのレビューに記載されている生理活性をまとめました。また、Fristiohadyらのレビューには、より細分化した対象疾患が記載されています。炎症性ケミカルメディエーターに係る機序が多い様です。
8.トピックス:近年の研究
8-1.コウカ抽出物によるTLR4-NF-κB-NLRP3シグナル伝達系を介した鬱病の改善
コウカ抽出物はCUMS(慢性予測不能軽微ストレス)鬱病モデルマウスにおいて抗鬱効果が認められました。あわせて、CUMSマウスのTLR4-NFκB-NLRP3炎症性シグナル伝達系を阻害する事が分かりました。
8-2.コウカより単離された2化合物の抗侵害、抗炎症作用
コウカより2種類のフラボノイド配糖体が単離され、これらは様々な鎮痛試験及び抗炎症試験に対して有効である事が確認されました。
9.引用文献
・社団法人日本薬学会 今月の生薬 ベニバナ Carthamus tinctorius L.(キク科)
・養命酒製造株式会社 元気通信 生薬ものしり辞典 紅い染料でおなじみの「紅花(コウカ)」
・マイナビ薬剤師 薬剤師のエナジーチャージ 第107回 「紅花(コウカ・ベニバナ)」の効能 血液サラサラ・血流改善に