ダイウイキョウ(大茴香、八角茴香、八角、スターアニス)
英名:Star anise、 Chinese star anise
ラテン名:Anisi Stellati Fructus
基原植物:トウシキミ(唐樒) Illicium verum Hook.f. (マツブサ科シキミ属 Schisandraceae Illiciacea)
基原植物であるトウシキミは常緑高木で、高さは15mくらい、年2回(2~3月と10~11月頃)黄緑色や濃いピンク色の花をつけます。果実はアニス(学名:Pimpinella anisum)に似た甘い香りがします。生薬名が類似しているウイキョウ(茴香または小茴香)はセリ科の植物ですが、共通の成分としてAnetholeを含有しています。
トウシキミの需要の大部分は、料理に使われます。例えば、中華料理の香辛料として知られている五香粉*の成分の1つで、肉や魚などを料理する際に使用します。また川魚などの臭い消しや香りづけとして用いられます。
*五香粉:花椒(または山椒)、クローブ、シナモンの3種と、スターアニス(ダイウイキョウ)、フェンネル、チンピのうち2種、計5種類が混合したスパイス
参考:ヱスビー食品 五香粉
日本に自生する近縁種のシキミの果実や種子はダイウイキョウに酷似していますが、猛毒の(Anisatin)などが含まれています。「しきみの実」は毒物及び劇物取締法の劇物に指定されています。
参考:東京都健康安全研究センター トウシキミ・シキミ
1.基原
トウシキミ(Illicium verum Hook.fil) の成熟果実を乾燥したもの。
2.産地
2-1.日本:
亜熱帯で生育する植物で、日本の気候には不向きで僅かに温室で栽培されています。
2-2.中国:江西チワン自治区、福建省、雲南省、広東省、江西省など中国南部
2-3.ベトナム:北東部地方(ランソン省)
2-4.その他
インド南部、インドシナ北部、韓国など
*紀元前2000年頃から栽培されており、野生種、栽培種の区別は困難で、原産地の特定には至っていません。
3.主な成分
3-1.Anethole(アネトール)
CAS No. 104-46-1 【参考:構造式】wikipedia
3-2.Estragole(エストラゴール)
CAS No. 140-67-0 【参考:構造式】wikipedia
3-3.Protocatechuic acid(プロトカテク酸)
CAS No. 99-50-3 【参考:構造式】wikipedia
3-4.Caryophyllene oxide(カリオフィレンオキシド)
CAS No. 1139-30-6 【参考:構造式】J-Global
3-5.Shikimic acid(シキミ酸)
CAS No. 138-59-0 【参考:構造式】wikipedia
シキミ酸はインフルエンザ治療薬であるタミフル(オセルタミビルリン酸塩)の原料になります。
参考:Wikipedia オセルタミビル
3-6.その他
・Monoterpenoids:Pinene、1,8-Cineol、Limonene 他
・Aromatic derivatives:Anisaldehyde、Anisketone 他
4.効能・効果
4-1.芳香性健胃薬
駆風薬(胃腸内にたまったガスを排出させ、ガスによる圧迫感を除く)、また胃弱・消化不良・中寒嘔逆(お腹の冷えで嘔吐・逆流する症状)の改善に効果があります。
4-2.抗菌作用
ダイウイキョウに含まれるAnetholeには抗菌作用があります。
4-3.その他
興奮薬として使用されています。
5.副作用
血液凝固時間を延長することが知られています。
6.副作用の回避
妊婦は禁忌です。
出血性疾患や消化器性潰瘍を患っている方は注意が必要です。
7.ダイウイキョウの多様な研究
Figure:Biological activities of Star anise( Illicium verum Hook.f. )
ダイウイキョウの成分の1つである、Anethole由来の活性に関する報告が多く見られます。
8.トピックス:近年の研究
8-1.ダイウイキョウのメタノール抽出物によるMCF-7細胞(ヒト乳癌由来細胞)に対する抗癌作用
ダイウイキョウのメタノール抽出物にはMCF-7細胞に対してアポトーシスを機序とする抗癌作用が認められ、IC50値は5.5μg/mlでした。
8-2.ダイウイキョウ油(essential oil)の主成分と抗真菌及び抗カビ毒効果
ベトナムのYen Bai Province省のダイウイキョウ油の主な成分は、trans-anethole(67.05%)、caryophyllene oxide(12.73%)、limonene(4.27%)でした。またダイウイキョウ油には抗真菌活性とカビ毒排除効果を認めました。
9.引用文献
・公益財団法人 国際緑化推進センター 途上国森林ビジネスデータベース トウシキミ由来のシキミ酸
・コトバンク ダイウイキョウ(だいういきょう)とは? 意味や使い方