モクツウ(木通)
英名:Akebia Stem ラテン名:Akebiae Caulis
基原植物:Akebia quinata Decaisne又はミツバアケビ Akebia trifoliata Koidzumi (Lardizabalaceae アケビ科)
基原植物であるアケビ、ミツバアケビは落葉性または半常緑性のつる性の木本です。つるは長く伸びて分枝し3 m以上になり、太いものでは径1.5 cmとなり、花は4月頃開花します。果実は長さ6~10㎝の楕円形で甘く食用となります。熟すと縦に割れて、白い果肉に包まれた黒い小さな種子が現れます。
アケビとミツバアケビの違いをFigure 1 に示します。
Figure 1 : 基原植物 アケビとミツバアケビ
また、自然交雑種であるゴヨウアケビは、粗い鋸歯のある小葉が5枚出ます。
参考:中国ではアケビ科以外の植物を基原とした川木通(キンポウゲ科)、関木通(ウマノスズクサ科)も、モクツウとして使用されています。これらには毒性の高いアリストロキア酸*を含有しているので注意が必要です。
*アリストロキア酸:重篤な腎症、泌尿器のがん、肝胆道がんなどの発症の危険因子を持つ化合物。
アケビ(Akebia quinata Decaisne)の花とつる
1.基原
1-1.基原
本品はアケビAkebia quinata Decaisne又はミツバアケビ Akebia trifoliata Koidzumi (Lardizabalaceae)のつる性の茎を、通例、横切したものである。
1-2.調製
秋頃につる性の茎部を採取し、外皮を削って輪切りにして日陰で乾燥させます。
2.産地
2-1.日本
四国(香川県、徳島県)、群馬県、鹿児島県、長野県などの山野。概ね野生品を採取して使用しています。
2-2.その他
中国、朝鮮など。
「神農本草経」には中品で、「通草」の原名で記されています。
3.主な成分
3-1.Oleanoic acid(オレアノール酸)
(CAS No. 508-02-1) 【構造式:出典】KEGG Drug Database
3-2.Hederagenin(ヘデラゲニン)
(CAS No. 465-99-6) 【構造式:出典】東京化成工業株式会社 ホームページ
3-3.Akeboside Ste(オレアノール酸配糖体)
【構造式:出典】KEGG Drug Database
3-4.Akeboside Stf(ヘデラゲニン配糖体)
【構造式:出典】KEGG Drug Database
3-5.Triterpenoid saponins(トリテルペン系サポニン)
Oleanolic acid glycoside : Akeboside Stj
Hederagenin glycoside : Akeboside Stb〜Std, Sth
3-6.その他
サポニンK塩、Aristoloside 他
4.効能・効果
4-1.利尿作用
膀胱炎、尿道炎、腎臓炎、排尿障害などの尿路疾患、また足の浮腫に効果があります。
利尿の服用量の目安として、大人の場合、10g/600mL(water)/dayと言われています。
4-2.消炎作用
特に眼(涙腺)の炎症に効果があります。
4-3.通経作用
月経の停滞に効果があります。
5.副作用
副作用の報告例は少なく、モクツウが配合されている漢方の添付文書を参考にしてください。
6.副作用の回避
副作用の多くは過剰摂取に起因しています。過量服用や長期使用には注意が必要です。
モクツウは、1日10gが最大摂取量の目安となります。
7.モクツウの多様な研究
日本薬局方ではAkebia quinata又はAkebia trifoliataが基原植物とされていますが、それぞれ、成分と活性は僅かに異なっています。Maciagらの論文を参考にしてください。
8.トピック:近年の研究
8-1.モクツウより得られたトリテルペンによるAβ42誘導の繊維形成抑制効果
モクツウより新たな化合物を含むオレノアール酸トリテルペンが単離され、このうち5成分に関してAβ42による線維化を抑制する事が確認されました。
8-2.モクツウより得られたsesquineolignan誘導体によるDGAT1の選択的阻害
モクツウより新規sesquineolignan誘導体の単離構造決定を行い、これらの化合物にはDGAT1選択的阻害活性を有する事を確認しました。また、molecular dockingによって、親和性の高いbinding siteの情報を得ました。
9.引用文献
・漢方知識「生薬単」初版, 6-7